NYCB株11%安、不動産に火種

CHOKO - マーケットアナリスト丨CFA

2024-02-02 11:18:44

米国の地方銀行で再び経営不安の兆しが出ている。商業用不動産向け融資債権に関わる大型損失の計上により、前日に株価が4割弱下げたニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)は1日も11%安となった。ほかの米地銀や米国の不動産融資を増やしていた米国外の銀行にも不安は飛び火している。

NYCBは前日比15%まで下げる場面があった。商業用不動産向け融資が比較的多い同業のM&Tバンクも1日に前日比5%安、ザイオンズは6%安となった。

米地銀株を組み入れた指数「KBW地銀株指数」は2023年末比で9%下落した。23年3月のシリコンバレーバンク(SVB)破綻直後に急落した後、各行からの預金流出圧力の和らぎや米景気の軟着陸期待とともに、地銀株指数は持ち直してきていたが、商業用不動産向け融資を火種に不安が再燃した構図だ。

動揺が広がるきっかけはNYCBが1月31日に発表した23年10〜12月期決算。アパートやオフィス向けのローンで焦げ付きが生じ、与信費用は前年同期比9倍の5億5200万ドル(約800億円)に急増。最終赤字に転落した。

NYCBは、SVBの直後に破綻したシグネチャー・バンクの一部資産・預金を継承し、「勝ち組」地銀との評判を得ていた。シグネチャーが持っていた商業用不動産向け融資債権は引き継がなかったが、もともとNYCBは不動産融資が主力。集合住宅を含めた商業用不動産向け融資は全体の6割弱を占める。

規模拡大に伴い銀行規制上の区分が変わり、同規模の銀行並みの貸倒引当金を積む必要があったことも、与信費用の増加につながった。

米バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)の銀行アナリスト、イブラヒム・プーナワラ氏は31日付リポートで「(銀行規制区分の見直しなど)NYCB特有の要因があった」と説明する一方、今回の損失計上は「業界全体で商業用不動産向けの融資態度が慎重に傾いていることを改めて意識させるものだ」とも指摘した。

米不動産調査会社グリーン・ストリート・アドバイザーズがまとめた米商業用不動産の価格指数は22年9月以降、前年同月割れが継続している。24年1月は前年同月比9.0%低い水準となった。

米商業用不動産向け融資の焦げ付きリスクは日本や欧州の金融機関にも飛び火した。

ドイツ銀行が1日に発表した23年10〜12月期の米商業用不動産関連の引当金は1億2300万ユーロ(約195億円)と前年同期の4倍、前の四半期比でも2倍に膨らんだ。融資全体に占める米商業用不動産向けは2%未満だが「担保価値が低下する中、満期を迎えたローンの借り換えがリスクとなる」(ドイツ銀)と説明している。

日本ではあおぞら銀行が1日、24年3月期の連結最終損益が従来の240億円の黒字予想から一転、280億円の赤字になるとの見通しを示した。米国のオフィス向け融資の採算悪化を踏まえ、23年10〜12月期に324億円の引当金を計上した影響が大きい。24年3月期通期の米オフィス関連の与信費用は450億円に上る見通しだ。

長らく続いていた低金利環境で、米国では利回りを求めて不動産投資ブームが起きた。米大手銀が規制強化で融資を積極的に増やせないなか、中堅地銀や外国銀行が成長分野と定めて融資し、ブームを後押しした。

ただ、在宅勤務の定着やネット通販の普及でオフィスやショッピングモールの需要はコロナ禍明け後も戻りが鈍い。米連邦準備理事会(FRB)が22年春に始めた急ピッチの利上げもあって、不動産価格は下落した。不動産投資会社が借り換え負担に耐えられずにローン返済を断念する事例は散発している。

Tác giả

CHOKO、上智大学経済学部卒、テクノロジー半導体業界アナリストとして3年間勤め、CFA 、FRM資格を取得した。

日本と中国の金融業界での実務経験があり、よりグローバルな視点から市場を分析することができ、株式ファンダメンタルズ分析、オプションプライシングと戦略、ボラティリティ分析を得意とする。 

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