日本の若手投資家、外貨資産「増やした」

CHOKO - マーケットアナリスト丨CFA

2023-11-14 12:09:00

日本人は欧米人に比べ、個人の資産に占める貯蓄の割合が多く、株式・投資信託の割合が少ないといわれてきました。2020年8月の日本銀行調査統計局作成の資料によると以下の通りです。

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日本と米国を比べると現金・預金と株式・投資信託・債券等の比率が逆転しており、日本の家計資産にしめる株式・投資信託・債券等の割合は、14%と決して高くないです。

2017年から2019年にかけて投資信託現在保有層における積立投資利用状況が、30.9%から42.4%に上昇しています。特に、20~30代の利用者が60%以上と多く、40~50代が40%台、60~70代が20%と、年を取るに従い、積立投資の利用比率が低下しています。

さらに投資手段ごとの内訳を年代別にみると、つみたてNISAの利用率が20~30代で33~40%、40~50代で15~20%、60~70代で10%未満となっています。若者に積立比率が高いのは、つみたてNISAの比率が高いためといえそうです。

日本人の株式投資に対する意識がじわり変わり始めている。つみたてNISA(少額投資非課税制度)の導入などをきっかけに、少ない資金をコツコツ積み上げる個人が増えているからだ。その担い手は将来に不安を抱く若者たち。投資先は彼らにも身近なアップルなど著名な米企業株や、米国の代表的な上場投資信託(ETF)が中心だ。新たな動きは改革のスピードが遅い日本企業や東京市場の問題も映している。

「日本株にも興味があるけど、今の給料ではとても選べない」。年初に証券投資を始めた東京在住の20代女性が購入したのは、米国の株価指数に連動するETFだった。1口当たり1万円弱から投資可能。日本株では投資単位が100株に引き下げられたとはいえ、最低額が数十万円にのぼる銘柄はざら。コツコツ投資家には高いハードルだ。

日本経済新聞社は3月、調査会社のマクロミルを通じて国内の20代から70代までの個人投資家の約1300人にアンケートを実施した。海外株など外貨建て資産の比率を1年前より「増やした」人は全体の36%にのぼった。なかでも20代は52%、30代は44%と目立って比率が高かった。

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なぜ海外株に投資するのか。20代、30代ともに理由(複数回答)のトップは「外国企業の方が日本企業よりも期待リターンが高いから」だった。それぞれ46%、54%を占めた。一方、50代、60代では「資産を分散したいから」が44%、40%と多く、資産形成を始めたばかりの20〜30代と投資理由に明確な差があった。

「右肩上がりの成長が不可能となり、日本株を長期で保有するにはリスクがある」。米国投資で1億円超の資産を築いた個人投資家「うりと」さんは強調する。「いまは将来に十分な年金が出るか分からなくなった。老後の心配があるからね」と、20代のめいとおいをはじめとした身近な若者には米国株の購入を勧めている。

アンケートでも、海外株の魅力として「(市場の)経済成長力が大きい」が44%、「利益や配当の成長率が高い」が41%と上位を占めた。投資歴15年で4年前から米国株投資を始めた「ひでぞー」さんは「米国株は成長が期待できる銘柄を1株単位から少しずつ積み立てのように買い増すことができる。アップルなど生活に身近な銘柄も豊富だ」と話す。

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日本株を保有する上での問題点としては「人口減少・少子高齢化」が52%、「財政悪化・増税」が38%とマクロ環境を指摘する回答が多かった。日本の将来に対する不安感から日本株投資に消極的になっていることが浮き彫りになった。

目立ったのは40代で「生産性の低さ」が40%と、ほかの世代ではみられない高さだった点だ。東証プライム上場企業の2021年度の自己資本利益率(ROE)は9.7%と前年度から約2.5ポイント改善したものの、米国(22%)を大きく下回る。企業の管理職が多い40代は現実の問題として生産性の低さを実感しているのかもしれない。

もっとも、今後投資配分を増やしたい金融資産では全体は日本株が41%と首位だった。20代、30代では米国株がそれぞれ40%とトップだったものの、日本株も31%、40%と続いた。その理由の一つは日本株の割安な株価水準にある。日本株を保有する理由として「割安感が高まったから」が、20代は36%と首位だった。

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万年割安の日本株にも変化の兆しはある。東京証券取引所は3月末、PBR(株価純資産倍率)が解散価値の1倍割れの企業について改善策を公表・実施するように求めた。一部企業では大幅な株主還元策を打ち出し、株価が急騰した事例も出てきた。

さらに4月に来日した米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が日本株への追加投資の検討を明らかにしたことも追い風だ。投資しやすい環境を整備し、日本企業に明らかな変化が見られれば、米国株に向いた若者の関心を取り込める可能性はある。

岸田文雄政権は「資産所得倍増プラン」を掲げ、目玉の一つとして24年からNISAを大幅に拡充することを決めた。投資枠が拡大され、制度が恒久化されるほか、非課税期間が無期限になる。アンケートでは拡充後のNISAについて、20〜30代の約40%が年間利用額を現在より増やすとした。

日本の未来を不安視する若者らの資産形成への関心は高い。資本市場に投資マネーを供給する投資家の予備軍を日本株に引きつけられるのか。市場改革が果たすべき責任は重い。

Penulis

CHOKO、上智大学経済学部卒、テクノロジー半導体業界アナリストとして3年間勤め、CFA 、FRM資格を取得した。

日本と中国の金融業界での実務経験があり、よりグローバルな視点から市場を分析することができ、株式ファンダメンタルズ分析、オプションプライシングと戦略、ボラティリティ分析を得意とする。 

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