トヨタ時価総額、日本企業初の50兆円　28年で5倍に

トヨタ自動車の時価総額が日本企業で初めて50兆円を超えた。6日の東京株式市場でトヨタ株は一時前日比5%（156円）高の3148円を付けた。50兆円の節目となる3065円を超えた。豊田自動織機や完全子会社のダイハツ工業といったグループ企業の不正拡大が発覚した中でも、同日に2024年3月期の業績見通しを上方修正し、株価を押し上げた。

上場来高値を更新したのは2週間ぶり。終値は5%高の3135円で、時価総額は51兆1474億円だった。日本経済新聞社の調べによると、国内の取引時間中も含む中で過去最高の時価総額は、NTT株が1987年4月に記録した49.6兆円で、当時のトヨタは4兆円台にとどまっていた。

トヨタ株は1996年6月に初めて10兆円を超えた後、28年で5倍となった。同期間の日経平均株価の6割高を大きく上回る。直近3年に限ればおよそ2倍の上昇だ。

トヨタは24年3月期の営業利益見通しを前期比80%増の4兆9000億円と、従来予想より4000億円上積みした。アナリスト予想の平均を示すQUICKコンセンサス（市場予想）の4兆7187億円を上回った。車の機能向上に伴う値上げ、生産台数や好採算車種の増加、円安が貢献する。

直近では海外投資家も日本株を再評価し、大型株を中心に買いを入れている。23年には200兆円以上を運用する世界最大級の政府系ファンド、ノルウェー政府年金基金がトヨタ株を追加取得した。トヨタ株は24年1月から始まった、新しい少額投資非課税制度（NISA）でも個人から人気を集める。

政策保有株やグループ株の圧縮による資産効率の改善も投資家の評価につながっている。株式市場では、豊田織機やダイハツの不正拡大は業績に対し「短期影響は限定的」（モルガン・スタンレーMUFG証券の垣内真司氏）と見る向きが多い。

QUICK・ファクトセットによると、トヨタの時価総額は世界の上場企業で27位。アジアでは台湾積体電路製造（TSMC）、韓国サムスン電子に次ぎ、中国のネット大手の騰訊控股（テンセント）と3位を競う。

世界の自動車メーカーの時価総額で比べると、トヨタは米テスラの85兆円には及ばない。ただ22年に最大で約4倍となった差は大幅に縮んだ。世界販売で首位のトヨタに次ぐ2位の独フォルクスワーゲン（VW）には5倍の差を付ける。

トヨタのPBR（株価純資産倍率）は1.3倍台、予想PER（株価収益率）は10倍台と、指標面に大きな割高感はない。SBI証券の遠藤功治氏は過去5年のPERや1株あたりの利益をもとに、今後半年から1年で達するとみる目標株価を「3700円」としている。

一方、遠藤氏はトヨタが電気自動車（EV）の販売台数を30年に年350万台と掲げる点については「壮大な計画であり、予断を許さない」ともみる。今後のEV戦略の鈍化や、グループ会社の不正による生産計画の下振れが、トヨタ株のリスクとなる。